presented by6+7新緑号New Car Impression

FRスポーツの新たな挑戦

TOYOTA 86

プロフィール

典型的な2ドアクーペ

 トヨタ86の真の姿を知ってもらうには、堅苦しいプロフィールの紹介よりは、実際の走りをお伝えする方がいい。というわけで、今回は本欄の通常の記述順序を変えて、テスト走行のインプレッションをまず、詳しくレポートする。
 トヨタ86は、とにかくカッコいい。全体フォルムは、いかにもスタイリッシュな2ドアクーペの典型的な形。バンパーの存在をあえて無視するように低く、小さく構えたフロントグリルから、流れるようなボンネット、上下に薄いフロントウィンドウ、空気の流れのスムーズさを伺わせるルーフからリアセクションにかけての美しいライン、そして2本のテールパイプをアピールするように、こちらも視覚上からバンパーを排した黒いデフューザー処理を強調するリアセクション。どれ1つをとっても、趣味性の強いスポーツモデルの進化形の眺めに徹する。

本格スポーツの運転席

 完全に今日的スポーツのムードを計算してデザインされたインテリアは、70年代からこのかた、ヨーロッパ車を含めた本格派スポーツカーが基本中の基本として重んじてきたドライビングポジションをまず意識してステアリング、ペダル、シートを配置し、これを高さを抑えたフロントガラス、小さ目のサイドとリアのウインドウ、必要最小限のリアスペースとシートで形作っている。そのキャビンは、ひと言で表現すればタイト&スポーティー。ステアリングを握る腕と、ペダルを操る両足をほぼ水平、ストレートに構えることを、いや応なしに強いるセッティングである。
 もちろんタイト&ニートながらドライバーのコントロール領域は増大し、それだけでその気にさせる一方、精神面での強い高揚や安心感、自信などを覚えさせる憎い演出で、スポーツカーの本来の姿に疎(うと)い若者を引きつけ虜(とりこ)にするトヨタの狙いが明らか。

トヨタ 86詳細写真

インプレッション

フラット4×直噴D4

 企画とデザインをトヨタが担い、具体的な設計と生産は富士重工の手になるとされる86/BRZだが、うち86は、スポーツ800、2000GT、AE86、スープラといった本格スポーツを生み出してきたトヨタ開発陣の“名車へのオマージュ”が色濃く漂う。とりわけスバルの専売特許たる水平対向エンジン・フラット4の搭載は、富士重工が当初から主導したものの、その裏では、スポーツ800で当時のパブリカ用空冷エンジンを用いて“水平対向”&FRというレイアウトを構築したトヨタ技術者の思い入れが渦巻いたという。
 そのパワースペックは、AE86が積んだ1600tを上回る2000t。エンジン積載重心が圧倒的に低い水平対向ユニットを、さらに出来るだけ低くマウントし、スバル製ブロックにトヨタお得意の直噴ヘッドを組み合わせて200ー3(AE86は当時130ー3)と20.9s/m、JC08で13.0q/ℓ(Gタイプ、6MT)の燃費をマークする。改めて繰り返すまでもなく駆動方式はFR。と強調すると、多少なりとも”通“を自認するドライバーは即、ドリフトかパワースライドを連想するかもしれない。が、かつてのAE86は、むしろアイドリングからレッドゾーンまで一気に吹け上がる鋭いパワー特性が持ち味で、ドリフトはさほど得意ではなかった。対して新時代の86は、厚いトルクに裏打ちされ、まぎれもないドリフトマシンのキャラクターを身につけている。

瞬時にレッドゾーンへ

 そのあたりを、実際に札幌郊外の峠、ワインディングと、そののちに高速自動車道を短距離ながら走って実証を試みた。テストしたのは、大きく4つあるグレード中、実質的にベースモデルに位置づけられるGの6MT。久し振りに、ごく低いシートポジションと理想的なストレートアーム、ダイレクト感と素早い断続のフィールが新鮮な6速マニュアルのシフトレバーを操る感覚が、ほぼ黒一色、スポーツムードあふれるコクピットの包まれ感と相俟って、いやが上にも気分が猛(たけ)る。
 2!水平対向4気筒DOHCのレスポンスは鋭く、今日では珍しい野太い咆哮と共に、レブリミットまで一気に吹け上がる。減速比を3.7台に設定したMTの1、2速は瞬時にレッドゾーンに達し、リミッターが介入する。このユニットが最も“らしい”フィールを伝えるのは最大トルク域の6000回転台の半ば。この領域では、305速で全く息つきのないレブの上昇を続け、他方実用トルクが始まる1800rpmからは6速でもスムーズ、かつフレキシブルに車速を引き上げる。

超1級のハンドリング

 365oの小径、太めのステアリングホイールの入力への応答性は、スポーツカー本来の水準と比べてもシャープ。大きい切り込みやクィックな取り回しに対しても、フリクションロスらしい徴候は軽微で、特に過敏でもなければルーズでもなく、ダイレクトなハンドリングは実に楽しい作業に終始する。前マクファーソンストラット、後ダブルウィッシュボーンの両コイルスプリングのサスは、基本的に硬めだが大き目のショックには意外にしなやかで、スポーツカーらしいシュアな接地感の一方で快適性の面でも、昔のスポーツカー的な荒々しさは皆無。ボディー各部やキャビンへの野暮なショックや音も、十分に納得できるレベルに抑えられている。

ドリフトマシンの素養

 また試乗車は国産の普遍的なグレードのタイヤを装着していたが、軽快な操作フィールを損わず、乗り味の軽快さと両立して、この点でもシャーシとタイヤ/ホイールのバランスの良さを感じさせた。もちろんタイトコーナーでのハードな旋回でもロールらしいロールは生ずることなく、少くともパワーを伝えている限りはタイヤのヘリが立つような印象もない。蛇足だが、こんなハードなドライビング中でも、前後左右の全方向視界が優れて開けていて、スポーツカーの常道である上下方向をすぼめられたガラスエリアが、良く計算されて装備されていることが伺える。
 なお、ツインブラザーズたるスバルBRZに、別の機会に試乗したが、こちらは86よりさらにトータルな低重心化に力が注がれている感じで、硬めのフラット感とコーナリングフォースの強さがやや感じられた。そして、パワーをフルに伝えながらテールスライド、ドリフトに持ち込むといった”気軽なスポーツ性“では、86の方が、どんなドライバーにも体感できそうな柔軟さが感じられた。ラリーやサーキット競技などを志向するわけではないドライバーには、86の方がお薦めできるチューンになっている。

改造専用グレード設定

 発売前、発売後を通じて86のアナウンスは十分だから、ハード面の紹介は簡潔にしたい。スリーサイズは全長4240×全幅1775×全高1280㎜、ホイールベース2570㎜、いずれも良く煮つまったニートないで立ち。エンジンは2ℓ水平対向4・直噴DOHC16Vでプレミアムガソリンを要求。最高200㎰、最大20.9㎏・mの出力/トルクを出す。全グレードFRで、スポーツ専用ベーシックグレードとなるRC(6MT)以外の全グレードに6速ATと6速MTが用意される。JC08燃費は、GT仕様はMT、ATともに12.4㎞/ℓ、GはAT12.8、MT13、そしてRCは追加装備、仕様変更なしの状態でシリーズ最高の13.4㎞/ℓをマークする。
 価格(車両価格)は上級グレードのGTリミテッド6AT305万6300円、同MT297万6300円。GTは同287万6300円と279万6300円。ベースグレードのGは同248万6300円と241万6300円。改造専用グレードのRCは199万円。ただし、RCをTRDやモデリスタなどのカスタマイズパーツなどでチューン、セットアップすると、いずれも相当のプライスアップになることは言うまでもないが、すぐにサーキットに持ち込めるパフォーマンスカーになり得る。エコ全盛、つまり“燃費・命(いのち)”の大合唱のただ中、走りの牙を削(そ)がれたモデルばかりがまかり通る昨今にあっては、ある意味で実に貴重な存在ではある。

テキスト:仲世古正之、Photo:川村 勲(川村写真事務所)、取材協力:ネッツトヨタ道都 中央店(011-631-3182)

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