presented by
2011.12+2012.1冬将軍号New Car Impression
完成度の高い、美しいデザイン
A6は'94年に初代がデビューしたアウディのアッパー・ミドル・サルーンである。初代はそれまで使用されてきた100をマイナーチェンジし、名称を変更されたモデルだったために3年と短命だったが、'97年に2代目、'05年に3代目と、熟成を重ねてきた。3代目は日本人デザイナー・和田智による丸みを帯びたスタイリングで、発表同年に世界カー・オブ・ザ・イヤーを獲得。アウディの方向性を確立したが、今回の4代目は先にデビューしたA7のアイデンティティを継承し、端正で美しい容姿をまとって登場した。
ラインアップは2.8と3.0(インタークーラー付きスーパーチャージャー)の2種類で、ともにFSI(直噴)エンジンとクアトロ(4WD)システムを搭載する。セダン系ではA4/A7/A8が既に新たなデザイン・モチーフに基づいたフルモデルチェンジを終え、新世代に移行。そしてこの夏、いよいよA6が満を持して登場したということになる。
今年春にA7を取材した時にも感じたのだが、アウディが導入しているデザイン・モチーフは非常に完成度が高く、そして美しい。A7は伸びやかでゆったりしたボディラインが魅力だが、A6は適度なサイズに収められ、ビジネスにもプライベートにも対応できる位置づけだ。
進化するアウディらしい技術集積
A6に求められたのはジェントルさとスポーティさ。これを両立させるのはとても難しいが、アウディは先ずボデイの軽量化から取り組んだ。軽さと強さの両立のため、高張力鋼板とアルミニウムによるハイブリッドボディを開発。全体の20%を占めるというアルミニウム素材はシャシー、サスペンション、ステアリング、ベアリング、ホイール、ボンネット、トランクリッドなど各所に採用され、先代比30%の軽量化を果たしている。それでもクアトロ・システムのために車両重量は1,790Kgと決して軽くはないが、トルクフルなエンジンや極めてスポーティに躾けられた7速トランスミッション「Sトロニック」によって、俊敏な走行フィールを得ている。
そのSトロニックだが、簡単に原理を書くと「1-3-5-7速と2-4-6速を各々担当するクラッチがあり、一方のクラッチを繋いだ時にはもう一方が次のギアを選択してスタンバイしている」というもの。このためシフトチェンジはまさに瞬きするほどの速さで行われ、滑らかな加減速と高効率(=低燃費)に貢献する。
またクアトロ・システムも進化している。通常時はフロント40%:リア60%のトルク配分を行い、路面状況によって「70:30」から「15:85」までという幅広い制御を行う。さらにトルクベクタリングと呼ばれるトルクの可変制御により、例えば高速コーナーの際、内側のタイヤのブレーキ調整を行うことでアンダーステアを打ち消すように機能する。
ジェントルながら、速くスポーティ
カタログには「ジェントルでありながらスポーティ。機能的なのにエモーショナル」と書かれている。それが”ありがちなキャッチコピー”でないことは、走り出してみるとすぐ分かる。7速Sトロニックの恩恵で出足は非常に俊敏だ。アウディ・ドライブ・セレクトで「コンフォート」を選択していても出足でグッと加速してくれるし、「ダイナミック」モードでは高回転まで引っ張るシフトタイミングになるので、極めてスポーティなフィールで運転を楽しめる。それも”速いサルーン”のレベルではなく、スポーティカーのフィールである。アウディ・ドライブ・セレクトはエンジン・レスポンス、シフト・プログラム、ステアリング特性、リバーシブル・シートベルト・テンショナーなどを総合制御するもので、変化の度合いはかなり大きい。「オート」にしておけば間違いないが、積極的に走りたいという方は「ダイナミック」を選択するべきだろう。
上位ラインアップの3リッターV6スーパーチャージャーは300ps/44.9kgmという圧倒的なパワー/トルクなので、さらにスポーティであると想像できる。こちらは残念ながら試乗はしていないが、2.8でも充分速いし、カタログ数値以上の走行性能を体感できる。今や標準仕様ともいえるアイドリング・ストップもこまめに作動し、環境への配慮も忘れていないことを明記しておく。
完成度の高いスポーティ・サルーン
インテリアは一見ごちゃごちゃしているように見えるが、MMI(マルチメディアインターフェイス)タッチ機能がコンソールに配置されている他はシンプルかつ機能的なレイアウトとなっている。MMIタッチはHDDナビゲーション、オーディオ、ハンズフリーフォンなどを直感的に操作できるもので、独自のタッチパッド機能がユニーク。これを指でなぞれば文字や数字を認識してくれるという優れものだ。そして室内全体を包み込むのは、レザーシートをはじめとするホスピタリティ溢れるムード。後部座席の足元も充分な広さを持ち、頭上には拳1.5個分のゆとりがある。
ちなみにリアウインドウがかなり寝かされているが、ドライバーシートからの後方視界はとても良く、こうした点にも手を抜かないあたりにアウディのポリシーを感じる。
あらゆる角度から検証して、極めて完成度の高いスポーティ・サルーンであると断言できるA6。A7/A8までのゆとりはいらないが、A4よりも高いステイタス性とともにスポーツ性をも求めたいという我がままに、確実に応えてくれる一台と言えるだろう。
取材協力:アウディ月寒(011-852-3154)、Photo:川村 勲(川村写真事務所)、テキスト:横山聡史(Lucky Wagon)
バックナンバー
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012
2011