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とうとう栄光の歴史に幕を閉じるトヨタ製FRミドルクラスセダン!

プロフィール

悲報!残念なTOYOTAの重大決定!

 時代のすう勢、世の流れというものに掉さすのは難しいものなのだろう。4月24日である、TOYOTAより正式発表があり、「マークXは今年12月をもって生産終了となります」という内容だった。マークXが消えてしまうという噂はかなり前からあった。それが現実味を増したのは一昨年の初夏、トヨタの世界戦略車であり、アメリカではセダン部門でのトップセールス記録を更新中であるカムリのニューモデルが発表された頃だろう。カムリはトヨタにとっては重要なモデルであり、その発表時点でトヨタ系全ディーラーでの扱い車種となる。

 その時点である、長い間、トヨタのミドルクラスセダンのメインブランドだったマークXの存在に疑問符が浮上したのは。もちろんトヨタから正式にマークXの先行きについてアナウンスがあったわけではなかったが、この先、トヨタミドルクラスセダンの主流はFF車であるカムリになるのだという認識は、否応なく関係者の中に浸透していったのは事実だった。

 その背景にあるのは日本国内のセダン市場の縮小だろう。ミニバンやクロスオーバーSUVという新しいジャンルのクルマが大きな人気を呼び、それはどのメーカーでも同様なのだが、4ドアセダンの需要は減少の一途。一昨年、2017年のマークXの販売台数は8,460台。それが昨年には4,108台にまで減ってしまったのだ。この現状を見る限り、メーカーとしてはなんらかの対応策が必要であろうし、そこには当然、残念ではあるが生産終了という最終的な選択肢が浮上することも予想できたのである。

半世紀にわたる栄光の歴史!

 マークXの系譜をたどると、その源流は先代のマークIIである。昭和43年にクラウンとコロナの中間車種として誕生したマークII、昭和40年代に入ってから急激な自家用車需要が高まり、そのユーザー指向に応えるためにも新たなグレードの車種が必要だったのである。当初はコロナ・マークIIと呼ばれ、コロナシリーズの新型という位置付けだったが、人気沸騰。発売された年の12月には月間登録2万台というベストセラーカーへとのし上がるのだ。昭和46年のマイナーチェンジで、フロントマスクの中央が突出したデザインとなり、これがその形状から「イーグルマスク」と呼ばれ、その人気は決定的となる。筆者も、その頃の勤務先の上司が、スポーツモデルである1900GSSを購入、うらやましくて仕方なかったことを覚えている。

 もう一台、マークIIの思い出は昭和51年にモデルチェンジされた三代目、形式名GX30型である。友人がこれを購入、丸目の二眼ヘッドランプで、これがネオクラシック調のデザイン。まるでイギリスの高級車のようなムードを持っていたのだ。特に直列6気筒エンジンを搭載していたLシリーズの2ドアハードトップは豪華グレードとして人気を博することになる。

 昭和55年には4代目にモデルチェンジ、ここからすでに発売されていたトヨタオート店のチェイサーと、ビスタ店での販売車クレスタが誕生、ここに「マークII三兄弟」のラインナップが完成する。この先、5代目GX70系、6代目GX80系がまさにマークIIの絶頂期といえるだろう。

 札幌トヨペット月寒店の副店長である村越泰仁氏も、「クルマには暗黙の序列のようなものがあったと思うんですよ。社長はクラウン、部長はマークII、係長はコロナみたいな。でもそれなりの会社の部長ならクラウンを買える経済力もあるんでしょうが、世間体もあってマークIIにする。ところが、このマークII、クラウンにも劣らない豪華な内装と運動性能を持っていたんです。ですから、クラウンに乗れないという劣等感ではなく、自らの意志と、現車の魅力を充分に納得した上でマークIIを選ぶという風潮が出来上がってきました。マークIIは誕生当時からトヨペット店の専売車種でしたし、私たちも自信と誇りを持ってマークIIを販売できたんです!」と言う。

 その頃、札幌トヨペットでも受注から納車まで大忙しだったようである。スーパーホワイトに塗られ、Cピラーには黒のガーニッシュがほどこされたマークII4ドアハードトップ・グランデはまさに高級車の代名詞であり、全盛期だった平成2年には、3月だけの単月販売台数が30,959台、同じく兄弟車のチェイサーが11,082台、クレスタが15,488台でありトータル55,000台を超えるという想像を絶する超人気ぶりだったのだから。

 吉田拓郎に「マークII」というヒット曲があるのだが、これはマークIIのCMソングなどではなく単に曲のタイトルがそうであっただけ。自分を振った彼女がマークIIで去ってゆくというという情景を歌ったのだが、それくらいマークIIが世の中に浸透していたという証しだろう。

 ただし、その異常な人気にも徐々に陰りが見え始めてもいた。平成に入り、マークIIも7代目、8代目と進化を重ねてゆくのだが、ミニバンブームが巻き起こり、経済的なコンパクトカーが見直され、さらにハイブリッド車が次々と登場。現在ではクロスオーバーSUVが主流となるにつれ、マークIIも販売台数を落としてゆくのである。

FRセダンの魅力を再確認するために!

 21世紀を迎えるまさにその年、2000年、平成12年に登場した9代目、110系を最後にマークIIはその幕を閉じる。その歴史を引き継いだのが平成16年に発表されたマークXだった。初代マークIIから10代目であることから、ローマ数字の10を表す「X」になったと聞くが、トヨタの発表によれば未知の可能性を意味する「X」であったようだ。

 この初代のマークX、単なるマークIIの後継車種ではない。確かにセダン需要は低迷しているが、セダンにはミニバンにはない安定感や動力性能の高さ、コントロールのしやすさを持ち、さらにデザインの自由度は高く、流麗なボディシルエットを入手できるなど優位点は多数ある。それを再度、ユーザーに見直してもらおうというトヨタの指針に沿った、セダンの復権を目指す意欲作でもあったのだ。しかし、その意欲作であるマークXをもってしてもセダン人気の回復を成し遂げることはできなかった。

 先代から基本プラットフォームはクラウンと共用になり、そこからオーバーハングを切り詰めるとこで運動性能を向上させ、車種バラエティを考えてFRばかりではなく、北海道のユーザーには必須である4WDも設定され、実際に札幌トヨペットでもマークXユーザーの90%は4WDを選ぶという。

 さらに、スポーツ派には350RDSという超ハイパワーモデルも用意したし、「G's」という価格を抑えた上で、サスペンションを専用スポーツ仕様にし19インチホイールや4本出しマフラーなど価格を抑えたスポーツバージョンもあった。極めつけはGAZOOレーシングがプロデュースした「マークX GRMN」だろう。FRのメリットを最大限に引き出すため前後のタイヤサイズは別。専用のトルセンLSDも装着し、6速マニュアルミッションのみという超スポーツカーまでラインナップに加えられた。それが可能だったのはFRセダンとして生まれたマークXの基本性能が優れていたからなのだ。

 ただそれらスポーツ指向車は限定販売であり、需要動向を変える要因にはならなかった。それを目指すにはイメージを一新するようなフルモデルチェンジやハイブリッド化などが必要だったろう。マークXは平成16年に発売されて以来、平成21年にモデルチェンジされたが、基本構造を一新するようなものではなかった。その後も細かいマイナーチェンジはあったものの、プラットフォームから変更するような完全なフルモデルチェンジは実行されていない。

 前述した札幌トヨペットの村越氏も、「当社では昨年、マークXを100台前後は販売しましたが、その数字はプリウスやハリアーの販売台数とは比べ物になりません。トヨペット店の専売車種であるハリアーの人気は圧倒的ですから。でも、もしマークXが一新され、ハイブリッドなど選択肢が増えたらもう少し状況は好転したかもしれません。実際、ハリアーをお買い上げくださったお客様が「やっぱりセダンが欲しい」と戻って来てくださった方もいるんです。そこにユーザー様のマークXに対する“愛情”も感じますし、私たちもFRセダンであるマークXに対する思い入れを持ち続けているんですよ!」

 営業係長の湯浅氏も、「マークXの発表会で来場者にプレゼントしたキャップ、いまだにかぶってくれているユーザーさんがいるんですよ。それを見た時には感激しましたね、マークXがこんなに大事にされているんだと思って。今回の“Final Edition”でもキーホルダーをプレゼントするんですが、きっと好評だと思います!」と語る。

 トヨタは個別ディーラーがそれぞれ専売車種を持つという現状から、全ディーラーが同一の全車種を扱う構想を進めるという。その場合、販売車種の整理や統合は避けて通れまい。その“消え去る車両”の一台がマークXになったのだろう。その生産終了にともない、FRベース4ドアセダンの国内専売トヨタ車はクラウンのみになる。自動車がこの世に姿を現して以来、その基本形はFRだった。その歴史と伝統をどう守り続けてゆくか、ぜひトヨタには新しいFRセダンを世に問う“度量の深さ”を期待し、心ときめくようなニューモデルの登場を待ちたいと思うのだ。

トヨタ MARK X詳細写真

インプレッション

特別なマークXが誕生!

 今回、試乗用に提供されたマークXは2・5リッターV6エンジン搭載の4WD、「250S Four」を“Final Edition”とした特別仕様車であり、当誌でも昨年の冬、インプレッションを実施したモデルと基本は同一車両である。しかし外観上、目につくのがフロントバンパーモールだろう。これがこの特別仕様車ではダークメッキされ印象度を増している。今回の試乗車は4WDだったので16インチホイールなのだが、FR車を選ぶと、そこには235/45R18というワイドタイヤとともに、美しく輝くスパッタリング塗装された専用ホイールが装着されている。できればこのホイール、4WD車にも装着して走りたいと思わせるほど魅力的なのだ。

 コクピットに乗り込むとそこにはサイドに赤を配したスポーツシートが出迎えてくれる。その赤はドアトリムやインサイドにも取り入れられ、さらにはシートステッチ、ステアリングホイール、シフトブーツにも赤の縫い取りがある。黒と赤の対比、スポーツ気分を盛り上げてくれる演出だ。

 ボディカラーは、ホワイトパールクリスタルシャインという白、シルバーメタリック、プレシャスブラックパールという黒の3色なのだが、シルバー以外はメーカーオプション価格が設定されている。しかし、このクルマはマークIIからつないできた系譜の最終版であるのだから、そのシリーズで最高の人気を誇った5代目から6代目マークIIのスーパーホワイトを選ぶべきだろう。白のマークII4ドアハードトップ・グランデが街中にあふれていたあの当時、その超人気ぶりを忘れないためにもマークXの最終版は白を選んでほしいと思うのだ。

 安全対策も万全であり、トヨタ自慢の衝突回避支援パッケージ「トヨタセーフティセンスP」が全車に標準装備されているのは当然のこと、さらに超音波センサーを利用して、駐車時の接触や衝突の回避に貢献する「クリアランスソナー&バックソナー」も標準装備とされている。

走りのFRテイストは充分に!

 シートに腰を落ち着け、チルトステアリングを一番下まで下げ、テレスコピックも手前まで引き出す。シートも一番低いポジションまで下げ、ランバーサポートも解除して体をシートに沈みこませる。スポーツドライビングには視点は低いほうがいいし、ヒップポイントも路面に近いほうがいいのだ。最近のトヨタ車の多くが採用しているダッシュボードから飛び出したモニターディスプレイだが、マークXの場合、それがない。ダッシュボードからの視線をさえぎらないのだ。これはスポーツドライビングには重要である。

 ただ、シフトレバーである。これもシフトブーツには赤の縫い取りがありスポーツ気分を盛り上げてくれるのだが、シーケンシャルシフトを使おうとすると大きなセンターコンソールがひじにあたり、スムーズにシフトできないのだ。まあ、ここはパドルシフトを使えば問題ないが、大きすぎるコンソールボックスは改善の余地ありだろう。

 走行モードは「SPORT」、「SNOW」、「ECO」とあるのだが、ここは迷わず「SPORT」である。シフトを1速に入れ、アクセルオン。FRらしく一瞬テールを沈み込ませ猛然と加速する。レッドゾーン手前の6000回転を越えたところで2速へ。タコメーターの針は4800まで落ちるがそこはまだ最大トルクの発生域であり加速は止まらない。

 このあたりの加速感はCVTでは決して味わえないし、もっと気持ちよかったのが減速時である。コーナー進入手前でシフトダウンするのだが、そのたびにタコメーターの針が跳ね上がり、ブレーキをうまく併用しながらスムーズに減速させることができる。このドライブフィーリング、これこそがスポーツセダンの真骨頂ではないか。

 高級セダンでありながら、スポーツ性とは何か、走りに楽しさとは何かを追求し、それを具現化してきたマークIIからマークXへのシリーズ。そして今、半世紀という時代を越えて愛され続けてきたトヨタのミドルクラス・スポーツセダンが姿を消そうとしている。しかし私たちはそのクルマ、マークXを決して忘れないし、またいつの日かきっと最上のFRスポーツセダンとして帰って来てくれることを願ってやまないのである。

ディーラーメッセージ

札幌トヨペット 月寒店
営業グループ係長 湯浅 雅一さん

 「いよいよ『MARK X』も今年いっぱいで生産終了となります。私たちトヨペット店ではメイン車種でしたから、やはり残念な気持ちがありますし、長い間、乗り続けてくださった多数のお客様からも『一時代を築いたクルマなのに消えてしまうのか…』という声をいただいています。そんなご愛顧いただいたお客様の声に応えようと、特別仕様車である“Final Edition”が発売となりました。内装や外観にも新しい装いを盛り込み、なにより安全対策を充実させました。この“Final Edition”ですが、限定販売ではありません。年末の生産終了まで、マークXを愛してくださるお客様には、私たちの『マークXを忘れないでください!』という気持ちを込めて販売させていただきます。月寒店には試乗車も常時ご用意していますので、ぜひ一度ご来店ください、お待ちしております」

主要諸元(250S Four "Final Edition")

全長×全幅×全高:4,770×1,795×1,445mm
ホイールベース:2,850mm
トレッド:前/1,545mm 後/1,540mm
車両重量:1,570kg
最小回転半径:5.4m
エンジン:2,499cc V型6気筒DOHC
最高出力:203ps/6,400rpm
最大トルク:24.8kgf・m/4,800rpm
JC08モード燃費:10.6km/L
ミッション:スーパーインテリジェント6速オートマチック
ブレーキ:前/ベンチレーテッドディスク 後/ディスク
タイヤサイズ:215/60R16
駆動方式:4WD
乗車定員:5名
車両本体価格:3,512,160円(税込)

テキスト:天野 克彦(BIBIMBA天野)、Photo:川村 勲(川村写真事務所)
取材協力:札幌トヨペット 月寒店、℡011-858-8101

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